【ECの掟#3】免税事業者こそチェックしておきたい!インボイス制度のポイントをおさらい《後編》
今回の「ECの掟」第3回目では、免税事業者に焦点を当て、2023年に導入されたインボイス制度についてさらに詳しく解説します。
ECサイト運営初心者の方々も、ぜひ参考にしてください。
インボイス制度とは?
インボイス制度、正式には「適格請求書保存方式」は、消費税を的確に納めるための新しい仕組みです。
課税事業者が適格請求書(インボイス)を発行・保存することが求められます。
この制度の目的は、消費税の不正を防ぎ、税収を安定させることです。
インボイスの重要なポイント
インボイスには以下の情報が記載される必要があります:
1. 適格請求書発行事業者の登録番号
2. 取引年月日
3. 取引内容
4. 税率ごとに区分した対価の額
5. 税率ごとに区分した消費税額等
この新しい制度により、免税事業者も影響を受けます。
免税事業者への影響
免税事業者はこれまで消費税を納める義務がありませんでしたが、インボイス制度導入により、取引先が消費税の控除を受けられないため、取引関係に影響が出る可能性があります。
課税事業者との取引
課税事業者は消費税の控除を受けるために、インボイスを発行できる事業者との取引を優先します。
そのため、免税事業者は取引の機会を失うリスクがあります。
これに対して、政府は以下のような優遇措置を設けています
• 売上の2割特例:2023年10月1日から2026年9月30日までの3年間、課税事業者に転換した場合、売上にかかる消費税の2割だけを納めることができます。
この特例により、免税事業者が課税事業者に移行しやすくなっています。
簡易課税制度の選択
売上が5000万円以下の企業は簡易課税制度を選択することができます。
簡易課税制度では、業種ごとに決められたみなし仕入れ率を適用して消費税を計算します。
例えば、小売業(第1種事業)では、売上にかかる消費税の50%を控除できます。売上が1億円で消費税額が1000万円の場合、500万円を控除し、残りの500万円を納税することになります。
業種ごとのみなし仕入れ率
簡易課税制度では、業種ごとに以下のようなみなし仕入れ率が適用されます:
• 第1種事業(卸売業):90%
• 第2種事業(製造業等):80%
• 第3種事業(建設業等):70%
• 第4種事業(小売業):60%
• 第5種事業(サービス業等):50%
この制度を選択することで、事務負担を軽減し、消費税の計算が簡素化されます。
免税事業者が取るべき対応
インボイス制度に対応するために、免税事業者は以下の対応を検討する必要があります。
課税事業者への転換
免税事業者が課税事業者に転換することで、取引先との関係を維持しやすくなります。特に、消費税の控除を受けるために、インボイスを発行できる事業者との取引を希望する課税事業者にとっては重要です。
消費税の上乗せ請求
消費税を含めた価格設定を行い、取引先に請求する方法もあります。これにより、免税事業者としての取引を維持しつつ、消費税分のコストをカバーできます。
取引先の見直し
取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認し、必要に応じて取引先を見直すことも重要です。これにより、仕入れ税額控除を確実に受けることができます。
課税事業者への影響と対応
課税事業者にとってもインボイス制度の導入は大きな影響をもたらします。
事務負担の増加
インボイスの発行や受領の管理、保存に関する事務負担が増加します。これにはシステムの整備や社員教育が必要です。
取引先の選定
適格請求書発行事業者との取引を優先するため、取引先の見直しが必要です。これにより、消費税の控除を確実に受けることができます。
コストの増加
システム変更や社員教育など、インボイス制度に対応するためのコストが発生します。これには早めの準備が重要です。
実際の事例
日経の調査によると、全国の企業に対してインボイス制度に関するアンケートを実施したところ、約55.4%の企業が「これまで通り取引を継続する」と回答しています。
しかし、20%の企業が「取引価格を下げたい」と回答しており、消費税の控除を受けられないことが理由とされています。
また、EC事業者にとっては、個人事業主や小規模な事業者との取引が多いことから、インボイス制度の影響を受けやすい状況です。
例えば、写真撮影や動画編集、ライティングなどを外部の個人事業主に依頼している場合、消費税の控除が受けられないため、コストが増加する可能性があります。
免税事業者の今後
インボイス制度の導入により、免税事業者は課税事業者への転換を検討する必要があります。
しかし、消費税の納税に伴う事務負担やコストの増加が課題となります。
起業支援と制度改革
政府は起業を促進するために免税事業者制度を導入しましたが、インボイス制度により、その恩恵が薄れる可能性があります。
課税事業者としての対応を求められる一方で、起業支援策の見直しも必要です。
フリーランスや小規模事業者への配慮
フリーランスや小規模事業者は、インボイス制度の影響を大きく受けます。
特に、クリエイティブ業界やサービス業では、課税事業者との取引を維持するために、消費税の上乗せ請求や価格交渉が必要です。
まとめ
インボイス制度の導入により、免税事業者は大きな影響を受けます。
課税事業者への転換や取引先の見直し、消費税の上乗せ請求など、様々な対応が求められます。
また、課税事業者にとっても、インボイスの発行や管理、取引先の選定など、新たな事務負担が発生します。
これにはシステムの整備や社員教育が必要です。
インボイス制度のメリットとデメリットを理解し、適切な対応を行うことで、EC事業者としての競争力を維持し、事業の成長を図ることができます。
今後もインボイス制度に関する情報を収集し、最新の対応策を講じることが重要です。